ツィンバロンについて


ツィンバロム(ハンガリー語でCimbalom)は、ハンガリーを中心とする中欧・東欧地域で見られる大型の打弦楽器。多くのものは39コース以上の弦、4オクターブ以上の音域を持つ。チンバロン、ツィンバロンなどの表記も多く用いられる(ツィンバロムは日本打弦楽器協会推奨表記)。ロマの音楽で多く用いられる他、コダーイ、ストラヴィンスキー、クルターグ・ジェルジなどの近現代の作曲家にもしばしば用いられている。コダーイがオペラから編んだ組曲『ハーリ・ヤーノシュ』(第3曲、第5曲でソロ的に扱われる)が特に有名で、しばしば演奏される。

外形的には、彫刻を施されたクラシックな雰囲気のものが多いが、最近では装飾を一切廃した楽器なども作られるようになってきている。メーカーとしては、Bohak の評価が高く、近年では Bohak から独立した Kosmos の工房の楽器の評価があがってきている他、チェコのVsianskyのLight Cimbalom などの注目も上がってきている。

VsianskyのLight Cimbalom
写真: VsianskyのLight Cimbalom。重量はわずか50kg。

ツィンバロムの歴史

ツィンバロムの起源は中東にあると考えられる。これがヨーロッパに到達したのは大移住時代のことで、14~16世紀に逢っては、全欧州で大変人気のある楽器になっていた。18~19世紀には、ジプシーにも採用され、各地で盛んに演奏されるようになった。1848年のハンガリー独立以降は、特に「ハンガリーの楽器」として、国のシンボルとして扱われるようになった。

ツィンバロムがクラシックで取り上げられるようになったのは、ハンガリーオペラの父、Ferenc Erkel のオペラ「Bánk bán (1861)」であると思われる。この作品の成功によって触発されたJoseph Schundaは、楽器の改良に取り組み、2オクターブ半だった音域を4オクターブ半まで広げた。この「ハンガリー風ツィンバロム」が最初にお目見えしたのは1874年だった。その後、Bohakにより更に改良を加えられて、現在の形に至っている。

ツィンバロムとピアノの関係

ツィンバロムは1700年頃に大型のものが作られ、「パンタレオン」と呼ばれた。パンタレオンは当時のヨーロッパで流行したが、その奏法や特徴が黎明期のピアノ製作に多大な影響を与えたといわれる。

ピアノのハンマーは、軸を支点に回転し打弦するが、これは既存の鍵盤楽器には見られなかった方式で、パンタレオンの奏法を参考にした可能性が高い。また、今日のピアノ・メーカーに直接つながる先駆者、ジルバーマンは、ダンパーを常時開放する装置を備えたピアノを製作したが、これはダンパーを持たないパンタレオンの響きを求めたものであった。やがてこの装置はピアノのペダルシステムへと発展する。