(BassFluteNight Vol.72)
日時:2026年6月12日(金) 開場 18:30 開演: 19:00
会場:アーティストサロン”Dolce”東京
チケット:【全席自由】4,000円
出演
マリンバ 崎村潤子、Memmi Ochi、伊原由加子
フルート 渡瀬P英彦
プログラム
エル・ボロンチョーン
ドミンゲス/ウマニダ
ヘッケ/クシコス・ポスト
三浦真里/ トロピカルカフェ
ワルラーモフ/赤いサラファン
ドヴォルザーク/ 家路
ピアソラ/タンゴの歴史
お問い合わせ
ドルチェ楽器東京 tel:03-5909-1771
フルート工房三響 tel:03-5960-5750
協賛: 株式会社ドルチェ学期東京、株式会社三響フルート製作所、株式会社プリマ楽器
プログラムノート
音楽は、人々の暮らしの中から生まれます。
祭りの踊り、旅の風景、懐かしい故郷への思い、人生の喜びや悲しみ――。本日のプログラムでは、メキシコ、ドイツ、日本、ロシア、チェコ、そしてアルゼンチンへと舞台を移しながら、人々の暮らしとともに育まれた歌や舞曲をお届けします。
前半は、マリンバの故郷ともいえる中南米の空気を感じさせる作品から始まり、日本人作曲家による色彩豊かな組曲へと続きます。後半では、人生の節目に立つ若者の心情や故郷への思いを描いた作品を経て、ピアソラが描いたタンゴの歴史へと至ります。
それぞれの作品に息づく人々の物語に耳を傾けながら、どうぞお楽しみください。
《エル・ボロンチョーン》(スティーブ・チャベス編曲)
《エル・ボロンチョーン》は、メキシコ南部チアパス地方で親しまれている伝統舞曲です。もともとはジャガー(ボロン)と蛇(チョーン)の闘いを表現した踊りです。陽気なリズムと親しみやすい旋律が特徴で、地域の祭りや祝いの場を彩ってきました。
チアパス州はメキシコにおけるマリンバ文化の中心地として知られています。この作品にも、人々が集い、語らい、踊る祝祭の空気が息づいています。躍動感あふれるリズムと鮮やかな音楽の色彩をお楽しみください。
アルベルト・ドミンゲス(1906–1975)《ウマニダ(Humanidad)》(ローレンス・キャプテン編曲)
メキシコの作曲家アルベルト・ドミンゲスは、《フレネシ》をはじめとする数々のラテン音楽の名曲を残しました。《ウマニダ(Humanidad)》は、「人間性」「人類」を意味する題名を持つ作品で、美しく歌う旋律と温かな情感に満ちています。
本日演奏するのは、アメリカのマリンバ奏者・教育者ローレンス・キャプテンによる編曲版です。原曲の持つ豊かな歌心を大切にしながら、マリンバの柔らかな響きによって新たな表情が引き出されています。ラテン音楽特有の情熱と優しさが同居する世界をお楽しみください。
ヘルマン・ネッケ(1850–1912) 《クシコス・ポスト》
ドイツの作曲家ヘルマン・ネッケによる代表作です。タイトルは「クシコスの郵便馬車」を意味し、19世紀ヨーロッパを走る郵便馬車の様子を軽快に描いています。
馬の蹄を思わせるリズム、快活に駆け抜ける旋律、そしてどこかユーモラスな雰囲気によって、発表以来世界中で愛され続けています。親しみやすく楽しい音楽の旅をお楽しみください。
三浦真理《トロピカル・カフェ》
吹奏楽や室内楽の分野で数多くの人気作品を生み出している三浦真理の作品です。
南国のカフェを舞台に、人々の暮らしや思いを4つの楽章で描いた組曲で、ラテン音楽やジャズのエッセンスを感じさせる色彩豊かな作品です。
Ⅰ. 浜辺のボサノバ
燦々と太陽が降り注ぐ浜辺。波の音、人々のざわめき、語らいの声。開放感あふれる南国の風景がボサノバのリズムに乗って描かれます。
Ⅱ. 記念日のワルツ
結婚記念日を迎えた老夫婦が、初めて出会った日に踊ったワルツを再び踊ります。穏やかで温かな時間が流れます。
Ⅲ. 望郷の歌
楽団の演奏が始まります。異国の地で働く人々の胸には、遠く離れた故郷への思いが去来します。作品中もっとも抒情的な楽章です。
Ⅳ. ハッピーサンバ
今日はカーニバル。色鮮やかな衣装をまとった人々が街を埋め尽くし、音楽に合わせて踊り続けます。華やかなサンバの熱気が、前半を明るく締めくくります。
《 休憩 》
アレクサンドル・ワルラーモフ(1801–1848)《赤いサラファン》
ロシア歌曲を代表する名作として知られています。
サラファンとはロシアの伝統的な女性衣装のこと。この歌では若い娘が母親に向かい、「(嫁入り支度の)赤いサラファンを縫わないでください」と語りかけます。嫁入りの支度よりも、まだ友人たちと歌い、踊り、自由な娘時代を楽しんでいたい――。そんな若さへの愛着と人生の節目を前にした複雑な心情が歌われています。
美しく親しみやすい旋律によって描かれるこの作品は、19世紀以来広く愛唱され、今日ではロシア民謡のように親しまれています。
アントニン・ドヴォルザーク(1841–1904)《家路》
ドヴォルザークの交響曲第9番《新世界より》第2楽章の旋律として知られる名曲です。
この旋律は後にドヴォルザークの弟子ウィリアム・アームズ・フィッシャーによって歌詞が付けられ、《Goin’ Home》として広く親しまれるようになりました。日本では《家路》の名で知られています。
遠く故郷を思うような温かな旋律は、国境や時代を超えて多くの人々の心に響き続けています。
アストル・ピアソラ(1921–1992)《タンゴの歴史》
1985年に作曲されたピアソラ晩年の代表作で、もともとはフルートとギターのために書かれました。
4つの楽章は、それぞれ異なる時代のタンゴの姿を描いています。
I. Bordel 1900(1900年:売春宿)
タンゴがブエノスアイレスの下町で生まれた頃の活気と奔放さを描きます。
II. Café 1930 (1930年:カフェ)
踊りのための音楽だったタンゴが、次第に「聴く音楽」へと発展し、深い抒情性を獲得した時代です。
III. Nightclub 1960 (1960年:ナイトクラブ)
ジャズや新しい都市文化の影響を受け、洗練された新しいタンゴの姿が現れます。
IV. Concert d’aujourd’hui 1990(1990年: 現代のコンサート)
伝統と現代音楽が融合した、ピアソラ独自の芸術世界が展開されます。第1楽章のモチーフが使われています。
タンゴという音楽が歩んだ約一世紀の歴史を辿るこの作品は、本日の演奏会を締めくくるにふさわしい名作です。
メキシコの歌と踊りから始まった本日の旅は、ロシアの若い娘の夢や故郷への思いを経て、最後にアルゼンチンのタンゴへとたどり着きます。さまざまな土地で育まれた音楽の中に共通して流れる、人々の喜び、郷愁、そして生きる力を感じていただければ幸いです。
